メキシコ人映画監督による「ROMA」が

英国アカデミー賞(オスカー)3部門を受賞!!

 

 

メキシコ人映画監督アルフォンソ・キュアロン氏の『ローマ(原題) / Roma』が、2月10日にロンドンで開催された英国アカデミー賞(オスカー)にて監督賞・撮影賞・外国語映画賞の3部門を受賞しました。「ROMA」というとイタリアを真っ先に想像しますが、この映画は1970年のメキシコシティローマ地区を舞台にした内容となっています。中流家庭で働く家政婦クレオ(主人公)の日常、そして彼女に降りかかる問題、それと同時に自分では解決しようのない階級闘争、人種差別、暴動事件といった当時のメキシコの社会背景が描かれています。この作品はキュアロン監督自身の家族をモデルにした半自伝的なストーリーであるとも言われており、登場人物一人一人の微妙な感情や人生模様が丁寧にスクリーンに映し出されています。

ストーリーは勿論のこと、とりわけ絶賛されているのが映像の美しさです。全編モノクロになっており、ノスタルジックさ、人間臭さ、人の温かさが溢れているとタイム誌や映画評論家などからも高い評価を得ています。

そしてもう一つの見どころは主人公クレオ役を演じた女優ヤリッツァ・アパリシオの演技です。彼女は当作品に出演する前は、オアハカ州でウェイトレスや受付などの様々な仕事に就きながら、保育士養成課程を修了するための学校に通っていたごくごく普通の女の子でした。偽企画を称して集まったうちの1人が、最終的にオスカー最優秀賞女優賞候補として世界中のメディアから注目を集めることとなったのです。演技どころか監督の名前さえも知らないことがかえって彼女の自然な表情や動作を生みだしたのかもしれません。

この作品は「もし自分だったらどうしただろう…」と思わせるほど身近に起こりえるメキシコの日常を描いています。そしてその日常は舞台となった1970年から50年経った今でもほとんど変わっていません。いまだに社会問題を自由に口にすることが難しいメキシコだからこそ、キュアロン監督はこの映画作成に挑んだのかもしれません。この作品を通して、現在そして未来のメキシコが抱える問題を一人でも多くの人が真剣に考えるきっかけとなれば、メキシコも何か変わるかもしれませんね。

 

【受賞歴】

・第91回英国アカデミー賞(オスカー):監督賞、撮影賞、外国語映画賞を受賞

・第75回ベネチア国際映画祭:最高賞である金獅子賞を受賞

・第76回ゴールデングローブ賞:外国語映画賞と監督賞を受賞

 

【アルフォンソ・キュアロン氏】

メキシコシティ出身。57歳。映画監督、脚本家、映画プロデューサー、映画編集者、撮影監督。

「最も危険な愛し方 」、「リトル・プリンセス」、「天国の口、終りの楽園」など数々のノミネートおよび賞を受賞。その後、「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」ではスティーブン・スピルバーグなどの多くの有名監督候補の中から抜擢される。『ゼロ・グラビティ』ではアカデミー賞10部門にノミネートされ、監督賞をはじめ、撮影賞、視覚効果賞など最多7部門を受賞。米国主要映画賞の監督賞を総なめにした。アカデミー編集賞を共同受賞したマーク・サンガーと共に、監督賞、編集賞を受賞する初のラテンアメリカ人となった。[一部ウィキペディア引用]